「日本の思想」(メモ5)

ところが「である」思考と「らしく」道徳の強い社会では、とかくそうした「はたらき」の区別が特定の人間や集団の区別からもっぱら出て来るように考えられます。つまり文化活動は「文化団体」や「文化人」に、政治活動は「政治団体」や政治家にそれぞれ還元されてしまうから、文化団体である以上、政治活動をすべきでない、教育者は教育者らしく政治に口を出すなというふうに考えられやすいのです。

こういう傾向がはなはだしくなってくると、政治活動は職業政治家の集団である「政界」の専有物とされ、政治を国会のなかにだけ封じこめることになります。ですから、それ以外の広い社会の場で、政治家以外の人によって行われる政治活動は本来の分限をこえた行動あるいは「暴力」のようにみなされるようになる。

丸山真男「「である」ことと「する」こと」(「日本の思想」所収)P190)

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