映画評「セブン・シスターズ」

☆☆☆(6点/10点満点中)

2017年イギリス=フランス=ベルギー合作映画 監督トミー・ウィルコラ

ネタバレあり

一種のディストピアSFとしてなかなか巧く作られた佳作である。

二十一世紀半ばの世界は、人口爆発による食糧難を遺伝子組換え作物により賄うが、その結果多生児が増え、人口抑制が強く迫られる。そこで中国の一人っ子政策の如き、子供を一人しか作らせず、それを徹底的な管理する社会が誕生する。二番目以降の子供は冷凍冬眠されられる。その政策を押し進めてきたのが科学者のグレン・クロースである。

 そんな折老人ウィレム・デフォーが出産時に亡くなった娘の生んだ7つ子を隠し、曜日を名前にして育てる。30年後娘たちはノオミ・ラパスに成長、曜日に相当する娘が同一人物として外出し、厳しいデジタルチェックを掻い潜っている。

 全員のまとめ役である優秀なマンデーがある月曜日戻って来ず、残る6人はパニックになり、チューズデーが危険が待っているであろう中彼女を探しに出る。案の定彼女は捉えられ、抉り出した彼女の眼球を使って彼女たちが息を潜めている部屋に当局が侵入、残る5人は犠牲を出しながらも一味を退治する。

 善後策を練っているところへ、彼女たちの一人の恋人らしい当局者マーワン・ケンザリが現われて、また状況ががらりと変わり、マンデーが児童分配局に人質的に監禁されていることを知る。彼を味方につけ、迫ってくる敵に対峙するうち、政策の背景に潜む陰謀に突き当たることになる。

100億人程度では深刻な食糧難は起こらないと僕は楽観視している。しかも100億人を超える頃に人口爆発の程度は収まって来ると考える。それはともかく、人口爆発と遺伝子組換え作物の問題を抱き合わせたところが、現時点で考えられる近未来SFとしての面白味となる。

 厳格な管理体制による七つ児をめぐるサスペンスは、未来版「アンネの日記」といったところで、静かながら非常に強烈なサスペンスが生れる。

 ところが、マンデーが失踪してから突然アクション中心の描写となり、もっと純SF的なものを想像していた僕は少しがっかりしたが、それでもなかなか楽しめる。ノオミの七役が貢献大と言うべし。

Yahoo!映画】にもっと個人差を付けた方が良いというご意見があったが、それは不自然にすぎる。七つ子である以上根本は同じ性格でなければならないはずで、現状でもかなり無理があるくらい。本作では区別の為に外見上の差別化を図っているのではないかと思う一方、心理学的に言えば、自分らしさを求めての彼女たちなりの工夫なのだろう。映画も僅かに匂わせているように、彼女たちは自分が思う程互いに違うわけではない。

スタートはハードSFと見なせるくらいだが、展開が進むにつれアクションやサスペンスが増して科学的にテキトーになり些か物足りなくなるが、手に汗を握らせてくれた後、少ししんみりさせて終る辺り、大衆映画として及第点と言って良い。

意地悪く言えば、遺伝子組換え食品の反対論者によるプロパガンダ映画でした。