詩集 ロ号33番 永井和子 −18−

 詩人 永井和子(1934〜2015)年 彼女の処女詩集。日常の暮らしの中で起きた様々な出来事を、主婦の目でつづった詩集。前55篇からなる長編だが順次お手元にお届けしたい。

      幸せな瞬間 

 

 わたしの小さな息子は

 土をけってとびあがる

 春の陽光のなかに

 泥に汚れた手が

 空をうつ 風をうつ

 陽光のなかにはじけた笑い声が  

 あさみどりの草の芽に染つて

 空へとんでいく

 その空のなかへ

 わたしの小さな息子は

 土をけってとびあがる

 みちたりた一瞬のきらめきのように    

           64・4・2

【追記】詩集 ロ号33番 <あとがき>