男郎花 ( 俳句、川柳 )

見下せば渓の底より秋の声

 

晴れた日の街の西日が薄っすらと橙色を帯びて来る、その風景にも秋の装いを感じるこの頃です。明日はまた、雨でしょうか。

 

廃城の森の奥より秋の声

山毛欅大樹両手で抱かば秋の声

阿吽にも息使ひあり秋日傘

低かりし知覧の塀や秋日傘

川端で屈みてをりぬ秋日傘

螻蛄鳴くや豚と軍艦てふ映画

螻蛄鳴くや真の闇より探る鍵

青空と三日ご無沙汰螻蛄鳴けり

昼の虫空地に土管ありし頃

どれがさて翁の句碑や昼の虫

防砂林海へ背を向け昼の虫

押し蓋のひと盆地とも秋曇り

秋曇り修験の滝のなほ白し

海の色二分けにして秋曇り

縄文も弥生も地下に粟稔る

石仏が語る村史や粟畑

武蔵野の風を往なして粟稔る

串刺しの落鮎の尾の動きけり

落鮎の腹ふくふくとひかりをり

落鮎へ水面のひかり集まれり

果たすべき約束のあり萩の雨

なにものか御座すごとくに萩の風

いしぶみへ集まるやうに萩の風

秋耕の同じリズムの夫と妻

秋耕の農夫の影の長さかな

秋耕や連山影をひとつにす