ミュージカル SMOKE@九劇

浅草・九劇で「ミュージカルSMOKE」(脚本・演出=菅野こうめい)

2016年に韓国でトライアウト公演を経て初演・再演されたミュージカルの日本版初演。

 日韓併合時代の韓国の悲運の天才詩人・李箱(イ・サン)をモチーフにしたもの。

 作品があまりにも難解だと周りに敬遠され、理解されない詩人・超(チョウ=日野真一郎)は自暴自棄となり、絵を描くのが好きでやや愚鈍な海(ヘ=大山真志)と共に、三越デパートの令嬢だという紅(ホン=池田有希子)を誘拐する。

海(へ)はまだ海を見たことがないので彼の絵には色がない。身代金を手に入れたら超と二人で海に行こうと思っている。しかし、超の留守の間に紅が海に頼み目隠しと猿ぐつわを外してもらい…。

 こう書くと通俗劇のように思われるかもしれないが、この後の展開は予想を超える。

 映画でも演劇でも韓国のレベルの高さはズバ抜けている。

 

 合わせ鏡に向かい合い永遠の時間に閉じ込められたかのような超、海、紅の3人の間に横たわる秘密とは…。

 天才詩人と言われながら、思想不穏の疑いで日本の警察に逮捕、拘禁され結核の悪化で釈放されるも27歳の若さで病死したイ・サン。その作品「烏瞰図 詩第15号」にインスパイアされた舞台はあたかも一篇の詩のよう。

 天才詩人の詩と美しい音楽、実力派俳優の幸福な出会い。

 鏡、煙、血…イメージの氾濫の中、理想と現実の狭間で懊悩する詩人の魂を大山真志日野真一郎(木暮真一郎とWキャスト)、池田有希子高垣彩陽とWキャスト)の三人が激しく熱く演じた。

 客席は東西南北のエリアの対面式で、舞台も濃密な空間。

 1時間50分。

 ユッコこと池田有希子さんとは久しぶり。

 思えばPARCO劇場毛皮のマリー」(1994年)に「紋白」役で出ていた彼女を九條さんに紹介されたのが出会い。ずいぶん長いつき合いになる。

 いまやミュージカル女優としてベテランの域。次は来年3月の日生劇場プリシラ」だ。

 こちらの密室劇とは180度異なる大舞台。これも楽しみ。

「SMOKE」は28日まで。

 帰り、松屋に寄り道。財布に中に眠ってた商品券4000円を使い、買い物。靴下やお茶、お茶うけの饅頭など。おつりがでるんだね。10年以上、財布の中で、ボロボロになった商品券。ようやく使えて一安心。