義父母の家で過ごした一月間

真子ちゃん、これからどうする?真子ちゃんとハナちゃんぐらいなら、贅沢はさせてあげられないけど一緒に暮らせるけど

そこは真子ちゃんが決めてくれたらいい

義母がそういうので、

私は実家の両親に負担を掛けたくなかったため、

義父母の家に住む選択をした。

アパートを引き払う。

今まで過ごした家がもぬけの殻になった。

なんと虚しいことか。

隣棟の一階の御家族の奥さんが出て来て私に満面の笑顔で話しかけてきてくださる。

お引っ越しですか?急ですね。せっかく少し仲良くなったのに残念です

小柄で細身で、美人と言うわけではないが、裏表のなさそうなナチュラルな薄化粧の女性だった。

仲良くなれると思っていたが、多くは語らずに私も取り繕った笑顔で彼女に笑顔を見せ

ええ。そうなんです。ちょっと急で。ほんと残念です。お世話になりました。

と挨拶をして、お別れをした。

呆気ないものだった。

義父母での生活は一言で言うと苦痛だった。

そのそも、義父と義母は中が悪い。

義母は何かと私に義父の文句を言ってくる人だった。

結婚なんてくじ引きみたいなもんでさ、私はいまだになんでこの人と結婚したのかと思うよ。田舎のお母さんはキツいしね。お父さんは昔ね、お酒を飲んで私とけんかをしてビール瓶をここに振り回して当ててね、凹んでるんだよ。

などと言っていたっけ。

義母は綺麗好きで家の部屋の四隅にチリ一つ落ちていないお家だった。

どちらかというと私は大雑把でお掃除はしないわけではないけど、得意なほうではなかった。

義父母の家で生活をしているときに、義母ルールがあって

早起きをして洗濯機を回して洗濯物を干したのだけど

一時間後に見たら干し直されていたことが何度かあった。

後になってこの出来事を友人に話したら、

無理!!私なら絶対に無理それ!!!

と言う。

私も最初はちょっとの傷くらいは心についたけど

考えることが山ほどあって、そんなこと気にしなくて済んでいた。

義父母の家での生活が一月を迎えようとしていた。

息苦しい。

この家には笑顔がない。

ハナもいつの間にか笑わなくなった。

ふっとそれに気づいた私はハナが笑わなくなったことが酷く気になった。

このままではいけない

と強く思った。

私はその日の夜に、義母に

明後日から実家に帰らせてもらいます、すいません

と伝えると

真子ちゃんが決めたんだからしょうがない。好きにしていいよ

という。

義父は複雑そうな表情をしていた。

義母と義父の会話は少ない。

一切笑うこともない。

私の両親は喧嘩こそするけど、二人ともよく笑い、オープンな二人である。

ハナが少しでも笑える空気を作ってやらなければ。

私はその使命感に駆られて義父母の家を出た。

御世話になりました。

カズ君のいなくなったお義父さんお義母さんの住むこの家に笑顔の花を咲かせることも出来ずにごめんなさい。

出来の悪い嫁だったと思います。

今は心からそう思う。

そして私はハナと実家に帰った。